リスク・レジリエンス工学
研究群紹介

ハカセになろう Messages from PhD and PhD candidates Vol.3 下妻 康平さん(リスク・レジリエンス工学学位プログラム)
システム情報工学研究群(通称:シス情)では、在学生や社会で活躍するOB・OGの皆さんにインタビューを行っています。
今回は、2025年度 博士後期課程進学説明会~ハカセになろう~ と連動し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ3回目は、リスク・レジリエンス工学学位プログラム 衛星測地研究室(指導教員:木下 陽平助教)において、衛星測地技術を用いた断層の固着域分布に関する研究に取り組む、下妻 康平 (しもつま こうへい)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
純粋に研究が楽しいというのが最大の理由です。今やっているような研究を将来も続けたい、仕事として自分のやりたい研究をするには博士号は必須だ、ということで進学を決めました。ちなみに他の(浅い)理由としては、Dr.という響きがかっこいい、スーツを着たくない(地球科学系の研究職は服装が比較的自由なイメージ)などがあります。
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
M1の終わりごろです。本研究群の内部進学制度選抜に申し込む条件の1つに”日本学術振興会特別研究員(以下、学振)に応募していること”があったので、M2の4,5月は学振申請書(≒研究計画書)の作成に注力しました。内部進学制度選抜の結果は不合格でしたが、学振申請書作成を通じて自分の研究テーマをより理解することができ、結果的に一般試験での面接に役立ったと感じています。
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
地震を起こすエネルギーは、断層面どうしが強く固着する領域(固着域)にたまるひずみだと考えられています。自分の研究では、プレート境界や活断層面においてその固着域がどのように分布しているのかを調べています。といっても、断層面の大部分は地下にあるので直接観測できません。そこで、まず地面の動きを衛星測地技術で観測し、「このように地面が動いているということは、断層のこの領域が固着してひずみを蓄えているからなのではないか」というように断層運動を推測するというアプローチをとっています。
図1 GPS座標値(Takamatsu et al. 2023; Yokota et al. 2018)に基づくGPS点の変位速度場(2014年〜2022年)
図2 南海プレート沈み込み帯におけるすべり欠損速度(すべり欠損が大きい場所は固着が強い可能性がある)
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
特にそのような出来事はなく、徐々に興味が湧いていったという感じでした。
初めから測地学・地震学に興味があって今の研究室・研究テーマを選んだわけではありませんでした。(大変失礼ですが)研究室は消去法で選びましたし、研究テーマも先生に「これやってみる?」と言われて受動的に決めました。学群3年までは都市計画を専攻していたためゼロからのスタートでしたが、徐々に分かること・できることが増えていくことが楽しく、気づいたら今の研究テーマにのめりこんでいました。
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
基本的に8時から夕方18,19時くらいまで研究しています。博士課程はほぼ講義がありません。自分の研究室では週1~2回ほどの頻度でゼミを実施しており、また個人的に他研究室(地球科学学位P)の輪読ゼミにも参加しています。産総研でリサーチアシスタント(RA)をしているので週2日ほどは産総研で研究活動をしています。博士過程の今でも陸上同好会に所属させていただいており、頭が疲れてきたら走って気分転換しています。
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)に採用していただいたほか、産総研でRAをしています。
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
まだ近い将来のことしか考えられていません。まずはどこかの研究機関でポスドクとして雇用されることを目標としています。
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
博士課程に必要なのは広い意味で「自主性」なのかなと思っています。これは1人で何から何までできるようになれ、と言っているわけではありません。指導教員や先輩後輩、場合によっては他大の学生や先生、様々な機関の研究者など、いろいろな人に研究内容や進路の相談を持ちかけることも自主性の一つだと思っています。
進学を迷っている皆さんも、まずは身近な人に何が不安なのか相談してみてはいかがでしょうか。