ライフイノベーション
研究群紹介
Messages from PhD and PhD candidates 2024 Vol.5 椎橋 卓哉 氏(ライフイノベーション(生物情報)学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2024」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ5回目は、ライフイノベーション(生物情報)学位プログラム 理研バイオインフォマティクス研究開発チームで、二階堂愛教授ご指導のもと、シングルセル解析という一細胞レベルで生命現象を理解するための研究に取り組む、椎橋 卓哉(しいはし たくや)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
現在製薬会社に勤めております。私の会社では、スタートアップの買収や臨床試験などが海外を中心に進められておりますので、海外の研究者とのやりとりが日常的に発生致します。海外では一人前の研究者として認められるには博士号を持っていることが前提となっている印象があります。例えば、自己紹介では必ずといっていいほど学位について触れるような世界です。そのため、その環境の中で対等に研究の議論していくために博士号が必要だと思い、社会人博士として大学院に進学することを決めました。
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
修士課程卒業後に製薬会社の研究職として就職しましたが、就職後1年程度で博士号取得を目指すようになりました。そこから月日が経ちまして、具体的に筑波大学への出願を決めましたのは入学一年前になります。
筑波大学の私の所属している学位ではTOEICの提出が求められておりますので、そのスコアを取得した後に秋冬の入試に出願いたしました。入学後の所属希望の研究室の先生に予めアポをとり、どのような研究テーマで博士号取得を目指すのか予め議論させていただきました。その内容を元に願書を作成し、入試に臨みました。
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
私の所属する研究室ではシングルセル解析という一細胞レベルで生命現象を理解するための研究を行っております。この分野では、生物を構成する一つ一つ細胞について詳細なデータを取得していきますので、莫大なデータを解析することになります。私は、その解析を進めるための新しいアルゴリズムの開発を進めております。例えば、今話題のDeep learning技術を用いて生命現象を解き明かすような取り組みを実施しております。自分の開発したアルゴリズムによって、細胞の状態変化や病気の原因などを解き明かせたら面白いなと思い日々研究を進めております。
図1:アルゴリズム開発
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
もともと病気の治療を目指した創薬研究に興味がありました。創薬研究を進めていく上で、どの研究分野の専門家になるかを考えた際に、莫大な情報から生命現象を正しく理解しようとするオミックス・バイオインフォマティクス分野に興味を持ちました。特に、生物分野はまだ実験科学が主流で理論科学のような分野はまだまだ未熟です。将来的に物理分野のように理論生物学が盛り上がったら面白いと思い、データを元に理論を構築する現在の分野にチャレンジしてみようと思うようになりました。
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
平日昼間は仕事をし、帰宅後数時間研究を進めております。休日も時間がとれましたら研究を進めております。もちろん休息も非常に大事ですので、プライベートが犠牲にならない程度に時間を確保して研究を進めております。時間があまりとれていませんが、会社で実施している研究分野と近い分野なので、前提知識があるという部分のおかげで、円滑に研究を進められていると思っております。
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
特に利用しておりません。
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
現職を継続していく予定です。社内での活動に関しましては、海外赴任などを視野にいれております。
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
研究が好きでしたら是非博士号に進学していただいたらいかがでしょうか。また、最近の製薬会社の創薬研究職は新卒も中途も博士号取得者がほとんどになっている印象があります。もし製薬業界に興味がありましたら、是非博士号を取得することを考慮していただいたらいかがでしょうか。肩書としても非常に重要かと思います。