知能機能システム
研究群紹介
Messages from PhD and PhD candidates 2024 Vol.4 古賀 愛実 氏(知能機能システム学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2024」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ4回目は、知能機能システム学位プログラム感触工学研究室で、橋本悠希准教授ご指導のもと、香料提示に関する研究に取り組む、古賀 愛実(こが まなみ)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
興味を持ったきっかけは「博士ってかっこいい」という憧れだったと思います。博士進学に興味を持ってから、進学説明会や「未来の博士フェス」というイベントに参加する中で、STEM分野における女性の少なさについて強く実感することが多くなりました。研究やアウトリーチ活動によって少しでもこの分野の盛り上げに貢献できればいいな、という思いも進学を決めた1つの理由です。
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
私が後期課程進学を考え始めたのは、大学院に入学することが決まったB4夏頃でした。大学院から筑波大学に入ったため、「せっかく筑波大で研究ができるのなら博士まで目指してみたい」と思い、家族の応援もあって進学することを決めました。私は大学院から今の分野の研究に取り組んでいることもあり、進学に向けて特別な準備はあまりできていませんでした。
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
私は香料提示について研究を行っています。みなさんは生活の中でどのくらい「香り」を意識して使っていますか?最近では、様々なタイプのアロマディフューザーや精油が売られ、心身の健康のために取り入れている人も多いと思います。しかし、効果に重点をおいて香りを選んだとき、必ずしもその香りが好きなにおいとは限りません。不快に感じる香りであった場合は、効果が得られないだけでなく、心身の疲労に繋がってしまう可能性もあります。そこで、私の研究では「香りを感じずに香りの効果を得る」ことを目的に香料提示手法について研究し、その手法における香りの効果を検証しています。現在はヒトが「香りがある」と感じられないくらい短い時間で香料を提示したときの効果について,生理的・心理的指標の計測を行っています。
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
大学院進学にあたって、志望する研究室を調べていくなかで「感覚」という分野に興味を持ちました。学部時代の私には「感覚の研究」との接点が一切なかったため、すぐに興味を持ちました。感覚というと、視覚や聴覚は多くの研究がされていますが、嗅覚はまだまだ分からないことも多く、様々な分野から研究が行われています。初めて学会に参加した際には、工学だけでなく、生物、化学、心理学と幅広い分野から、嗅覚や匂いについての研究が行われていることを知り、とてもワクワクしました。他分野の研究者と議論ができる点はこの分野の魅力の1つであると思っています。
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
感触工学研究室では週2で進捗報告会があります。1つは当番制で進捗発表を行うもので、もう1つはバーチャルリアリティ研究室と共同で全員が報告を行うものです。その他でも適時、先生や研究室の仲間たちに相談しながら研究を進めていきます。
私はサイエンスコミュニケーションにも興味があるため、大学院共通科目の「サイエンスコミュニケーション概論」「サイエンスコミュニケーション特論」などコミュニケーションに関する講義を受講しています。
土日は締め切りが近いときは研究をすることもありますが、基本的には友人と遊んだり、ゲームやアニメ、その時に興味を持っている(研究とは直接関係のない)分野の勉強をしています。
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(大学フェローシップ創設事業(情報・AI)相当)に採用されたため、研究費と研究奨励費(生活費相当額)を頂いています。
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
博士後期課程への進学を決めた当初は企業での研究・開発職に興味がありましたが、現在はSTEM教育の支援や研究者支援にも興味があります。研究や開発を行いながら、博士取得研究者として情報発信やイベント企画を行い、STEM分野や博士を身近に感じてもらえるような活動をしていきたいです。
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
「博士進学」の選択肢がある時点で、進学を選ばなかったときの後悔はあると思います。その後悔に向き合えることができるのか、というのは決め手の1つになると思います。私の場合は、博士進学したい理由が大小たくさんあって、自身の性格上「今進学しなければ、今後進学することはないが大きな後悔はする」というイメージが容易にできたのでチャレンジすることを選びました。また、家族や友人に背中を押してもらえたことも大きかったと思います。悩んでいるのなら、思い切って相談してみるのはありだと思います。博士に行ってまで何をしたいのか、何に惹かれているのか、何が不安なのか、その解決策はないのか…たくさん話していく中で、気持ちも定まっていくのではないでしょうか。