リスク・レジリエンス工学
研究群紹介
Messages from PhD and PhD candidates 2024 Vol.3 赤星 桜良 氏(リスク・レジリエンス工学学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2024」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ3回目は、リスク・レジリエンス工学学位プログラム 認知システムデザイン研究室で、伊藤誠教授ご指導のもと、自動運転の研究に取り組む、赤星 桜良(あかほし さくら)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
研究活動に興味を持っていたからです.あまり迷わず進学を決めた理由は,①いずれ近い将来働き始める,②社会人になったらどのような生活になるか何となく想像できた,からです.周りで先に就職した人たちも多く,話を聞く機会が多かったです.また,自身もインターンシップに行ったことがあったので,合わせて考えた時,働いた後の自分の生活を想像できました.ですので,もう少し学生してみようかな? と思えました.
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
修士に入学した後から徐々に視野に入れました.近年は就職活動が早期化しているため,就職を選択するのであれば,M1 春夏から就職活動をする必要があると考えていました.しかし,修士に入学し,すぐに就職活動に精を出すことが腑に落ちなかったこと,研究をもっと続けてみたい,と思ったため,後期課程進学を決意しました.進学の準備としては,研究費の申請等を行いました.また,後期課程在学中に研究留学をしたいと思っていたので,留学の候補先を調べたり,先方に連絡を取ったりしていました.留学は後期課程と直接的に関係のあることではないですが,自分の目標の一つだったので,準備して良かったと振り返ります.
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
自動運転レベル3 の権限委譲に係る研究で,Prof. Frank Flemisch の提唱するホースメタファーに基づく共有制御の設計を行っています.(*レベル3 では,自動運転システムが特定の条件下で運転タスクを実施するが,緊急時,ドライバ (人) はシステムからの運転引継ぎ要請に対応しなければならない (SAE J3016, 2021).) ホースメタファーとは,自動運転車と人間の協調的なインタラクションを,馬と騎手の関係になぞらえた比喩を指します.研究の問いとしては,従来の馬車が獲得していた危険を予知する能力と馬-騎手のインタラクションの能力をどのように今日の自動運転車に設計,補完できるのか,ということです.先人の知恵を現在の先端的な科学技術と組み合わせることは,難しくありますが,新しい可能性も秘めていると考えます.
ドクターコロキアム: 同じ研究分野に従事する世界各国の博士学生やエキスパートらと会い,良い時間を過ごしました.
自動運転車 Waymo One (レベル4) 試乗: サンフランシスコで,研究対象である自動運転車に実際に試乗しました.
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
研究室のホームページで見たこと,M2 頃の教員の研究テーマ紹介で聞いて,自動運転の権限委譲や権限配分について興味を持ちました.また,運良く,ホースメタファー提唱者の Prof. Frank Flemisch の元へ研究留学する機会を得ることができたことも大きく関連しています.Frank から直接,研究の核となるホースメタファーや,Balanced Human-Machine Integration についての思想や哲学を聞けたことでより関心を持ちましたし,自分の中でずっと大切にしています.
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
午前①: 英語
午前②: 研究 (最近は,学会の論文修正や発表資料作成を主に行っていました.)
昼: 後輩と外へ食べに行ったり,一人で買って食べたりしています.
午後①: 事務作業
午後②: 研究
講義: 不定期に月1, 2回ある程度です.
自由時間: 月1回はバドミントン or ランニングをし,運動するよう心がけています.また,旅行に行って各地を散策することや,自然体験のアクティビティを体験することが好きです.
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
国際的に活躍する研究者になることです.研究活動は個人でも国内でも行えますが,留学や国際会議に参加した経験などから,国際的なチームワークを形成したいと考えました.ヨーロッパ圏への留学を通じて,ヨーロッパでは,EU project が数多くあり,EU が経済・政治的以外にも密に繋がっていることを肌で実感しました.日本人であっても,そのようなグローバルな輪に入って研究したいと思うようになり,それが目標です.
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
後期課程はライフプランを変える選択にもなりうるので,安易なコメントは難しいですが,自分の中で博士進学したい,このような研究をしてみたい,という気持ちがあるなら,挑戦してみたら良いと思います.日本は,中退・休学がネガティブにみられがちですが,後期課程が合わなかったら中退して就職するという手段もあると思います.筑波大学やシステム情報工学研究群は,研究活動を行う環境が整っており,後期課程を過ごすのに良い環境だと思います.また,近年は学内の後期課程学生支援プロジェクトも増え,積極的に学生を取り入れる風潮になっています.世間体や周りに流されずに自分の選択したい道を,勇気を持って,チャレンジしてみてください!