構造エネルギー工学
研究群紹介
Messages from PhD and PhD candidates 2023 Vol.5 鮎貝 崇広 氏(構造エネルギー工学学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2023」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ5回目は、構造エネルギー工学学位プログラム 理論混相流体力学研究室で、金川哲也准教授ご指導のもと、気体と液体の混合流体の流れ(混相流)を記述する数学モデルの開発に取り組む、鮎貝 崇広(あゆかい たかひろ)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
構造エネルギー工学学位プログラムに進学する以前は地球学類(生命環境学群)に所属しており、大学院から専門分野を180度変更したため、前期課程の2年間だけでは消化不良になると考えていました。せっかく工学へと専攻を変えたのだから、とことんまで突き詰めてみたいという思いがあり、後期課程への進学を決めました。
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
前期課程に進学した時点で、後期課程への進学をある程度視野に入れていました。また、学振特別研究員に採用されることを一つの目標としていたため、前期課程1年次から積極的に学会発表や論文執筆を行い、研究業績の向上に努めました。
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
気体と液体の混合流体の流れ(混相流)を記述する数学モデルの開発を行っています。混相流はポンプ等の流体機械や原子炉で現れるほか、生体中や火山直下のマグマ溜まりなど様々な場面で登場します。そのため、普遍的な数学モデルを構築することは様々な対象の解析を可能とし、このような学際性が混相流の理論研究の大きな魅力の一つです。博士後期課程では、工学だけでなく医学や地球科学など様々な分野の研究者と議論を交わすことができ、人生において大変貴重な経験となりました。
図1:混相流(気泡流)の概念図と流動を表す数学モデル
図2:混相流としてのマグマ
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
地球学類時代に現在の指導教員(金川哲也准教授)の授業を受講した際、先生の学問に対する考え方に大きく共感したため、大学院から研究室を変更したという経緯があります。そのため、当初は研究方法(理論的アプローチ)のみに興味があり、研究対象(気泡を含む流れ)にはあまり関心がありませんでした。しかしながら、分野の背景を詳しく調べるうちに、混相流は原子力発電などと非常に強い繋がりがあることを知り、分野自体に強い興味を抱くようになりました。
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
金川研究室では学生全員が集まるゼミは基本的に開催されておらず、学生個人の自主性に基づいて研究を進めるスタイルです。自分の場合は、先生との個別ゼミを通して、月初めに研究の目標や計画を立て、それを1か月間で着実に遂行することを繰り返すことで、研究を進めています。以上の地道な積み重ねにはメンタルの安定化が不可欠であり、そのために、7~8時間の睡眠時間の確保と、週1日は研究から離れる日を必ず作ることを徹底しています。
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
学振特別研究員に採用されており、研究奨励金という形で経済的支援を頂いております。また、当該支援は年額240万円であるため、授業料の全額免除(年収280万円以下が対象)を受けています。昨今ではJST次世代研究者挑戦的プログラムなど、後期課程学生に対する支援は年々充実してきており、後期課程進学に対する経済面での不安は減少しつつあるように感じています。
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
現時点で重工業メーカーに内定が決まっており、卒業後は企業の研究職として働く予定です。長い大学院生活の中で培った学術的知識やトランスファラブルスキルを活かし、産業界で活躍したく考えております。
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
進学か就職かで悩む場合、個人的には進学することを薦めます。なぜなら、後期課程は長い人生の中で研究だけに専念することのできる貴重な数年間であるからです。もちろん、就職後に社会人博士として後期課程にチャレンジすることは可能ですが、自分の興味のあるテーマに一切のしがらみ無く自由に取り組めるという点において、課程博士は人生最後のチャンスであると考えています。