リスク・レジリエンス工学
研究群紹介
Messages from PhD and PhD candidates 2023 Vol.2 垣野内 将貴 氏(リスク・レジリエンス工学学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2023」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ2回目は、リスク・レジリエンス工学学位プログラム 暗号・情報セキュリティ研究室の面研究室で、面和成教授ご指導のもと、視覚障害者へのセキュリティ教育の研究に取り組む、垣野内 将貴(かきのうち まさたか)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
博士前期課程修了でも可能な大学教員の話が決まり,研究を進めていくうえでも職場としても博士号が必要となったからです.
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
今の職場への就職が決まった時点で視野に入れており,2021年の2月からでした.指導教員と相談して,研究を進めながら,研究ミーティングを重ねながら2022年の4月入学を目指すことにしました.
準備は,指導教員がHPに明記してくれており,その中から最新研究の拾い読み/セキュリティ資格/Python/英語の勉強をしていました.
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
視覚障害者へのセキュリティ教育の研究をしています.セキュリティに限らず情報教育の研究はまだまだ未開発な部分が多く,さらに視覚障害者となると,スクリーンリーダーに関するものなど特有の対策がいくつかあります.これらの課題を洗い出し,どんな項目を重点的に教育できればよいか,どんな教育手法が活用できるか,ということを中心に研究を進めています.
採録された国際学会の予稿集等
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
博士前期課程を修了した後,9年間高校や中学校で数学科教員として働いていました.博士前期課程では情報セキュリティの研究をしていましたが,教育現場でも教育の研究をしており,研究の面白さに気づいた頃に博士前期課程時代に学会でつながりを持っていた先生から大学教員のお誘いをいただきました.これを機に,セキュリティと教育が共に関連する研究ができたら,自分の強みも出せる研究ができると思い,この研究テーマに決めました.
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
研究は仕事と重なる部分も多く,仕事の成果にもなるので,時間を見つけてどんどん取り組んでいます.社会人博士学生なので,ゼミなどは参加できるだけにしてもらっていますが,それぞれの発表は勉強するつもりで聞かせてもらっています.大学教員としての立場になったうえで,各講義に学生として参加できたのは大きな経験になりました.どの授業も参考にできる部分が大変多かったです.博士前期課程時代とはモチベーションそのものが全く違ったので,結果につながるための努力を惜しまずできた気がしますが,社会人経験も活きて,自由な時間はかなり取れていた方だと思います.自分の趣味などに活用する時間も取りながら,時には朝まで論文を書く作業に充てるなど,充実した2年間を過ごせました.
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
社会人博士学生として在籍していたこともあり,経済的支援は利用しませんでした.国立大学であることもあって働きながらであれば十分に通えたのも筑波大学を選んだ理由でした.
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
指導教員のように,大学の教員として様々なことに挑戦したいと思っています.外部の仕事につながったり,研究会で大切な役割を担ったり,国際学会に参加したりと,洋書の翻訳や単著の出版など,この職業ならではの充実につなげていきたいです.
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
博士前期課程までと異なり,博士後期課程では修了要件として成果そのものが求められることが本当にシビアだと感じています.自分も博士前期課程は「まだ働きたくない」という気持ちもあって進学した部分がありましたが,その気持ちで博士後期課程に進学すると辛さばかりが目立つと思いますし,博士後期課程に進んだものの辛くて諦めた人を何人も知っています.働きながらでも研究はできますし,指導教員もそれぞれ「研究に一番気持ちが向いているときに博士後期課程に挑戦してほしい」と思っているはずなので,「そのつもりである程度成果を出せたら戻ってきます」という宣言もありだと思います.その一方で,働きながら研究をしていた頃はブラック企業のように働いていた自分の辛さもありましたし,妻には当時かなり迷惑をかけていました.周りの環境を含めて,迷っているあなたにとっての適切な時期での博士後期課程進学になると良いと思います.博士後期課程に進学して研究の面白さにはまる人が一人でもいることを望んでいます.