研究群紹介
社会工学
Messages from PhD and PhD candidates 2023 Vol.1 秦 涼太 氏(社会工学学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2023」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ1回目は、社会工学学位プログラム SEAM(Service Engineering, Accounting and Marketing) Lab.で、岡田幸彦教授ご指導のもと、車・橋・路面の状態を計測・推測する技術の開発に取り組む、秦 涼太(しん りょうた)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
知的好奇心を満たし,熱中・熱狂できる環境を求めた結果,博士課程進学という選択になったというのが私の進学理由です.また,企業就職していたとしても博士課程進学は近いうちにしていたと思います.それくらい魅力的な環境に私は見えました.
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
修士課程1年次には意識していましたが,準備を始めたのは2年次の5月です.進学に向けた準備は,ほとんどできていませんでした.なので,どのような準備ができているのが良いかを考えてみたいと思います.入試は審査基準に基づいて合否判定がなされます.この審査基準に基づいて準備をすれば良いです.一般入試の場合,一定の基礎力及び研究能力を備えた人材を選抜すると書かれているので,成績や研究内容が評価されると推察されます.なので,もし間に合うのであれば高い成績を取得すること,研究能力があると主張できる証拠を揃える戦略が良いと思います.つまり,査読付き論文を持っているのは有利に働くでしょう.一方,私のように査読付き論文なしでも一般入試であれば合格できる事例がありますので,最後まで諦めないのが良いです.
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
私の研究テーマは,車・橋・路面の状態をデータから推定することです.具体的には,車に加速度センサを取り付け,橋の上を走行した時に計測されたデータから,車や橋,路面の健全度などを知ることができます.これが何の役に立つかというと,今まで橋の状態を調べるためには専門の技術者が直接橋を点検しなければならず,それは時間も費用もかかります.しかし,この技術を使えば車が橋を通るだけで良いので,素早く簡単に実施可能です.そのため,予算や人手が不足している地方自治体でも,効率的に橋の点検ができるようになります.さらに,物流や旅客車両にも適用できるので,企業の新たなサービスとしての価値が見出せるかもしれません.また,車のカタログや橋の設計図,技術者の経験,橋で測定されたデータなどを活用すれば精度向上が期待できるので,様々な人と協力可能な数理モデルの開発が私のテーマとも言えるかもしれません.
このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
2021年度にも回答しているので,繰り返しになりますがもともとマーケティング研究を行っていましたが色々あり,岡田先生から勧めて頂いたのがきっかけです.今考えれば,お世話になった方に橋を作っていた人がいて,家族に長距離トラックドライバがおり,仲が良い先輩の研究テーマでもあったので,いずれこの研究テーマに取り組むことになっていただろうと思います.また,山本亨輔先生の授業がわかりやすく私でも参入できたのと,善甫啓一先生のキャリアを知って研究テーマを広く持つのも良いと思えたことも要因の一つです.
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
基本的に生産的な活動(研究・ゼミ)は15時までに終え,それ以降の時間は勉強に当てています.私は一つの研究だけをひたすらやり続けるよりかは,複数の研究テーマに触れたい欲求が強いため,後輩の研究を手伝いや,異分野融合型データサイエンティスト育成プログラムなどを受講しています.また,気になる学会にはとりあえず行ってみたり,知らない人しかいない懇親会に参加してみたりなど,若さを武器に好き勝手に活動できています.休日は友人と会うことが多く,特に用事がなければ研究室にいます.最近はサウナに行き始めましたが,整うという感覚を掴めずにいます.睡眠時間や効率が落ちると露骨に生産性が低下し,精神的にも不安定になるので寝ることに関してはこだわっています.一方,睡眠に影響のあるカフェインを含むコーヒーはやめられそうにないです.
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
学振特別研究員制度を利用し,生活費を頂いています.
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
アカデミアポストを取得し,自身の研究室を持ちたいと考えています.目標としては,査読付き論文100報を目指していきたいです.
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
博士後期課程は楽しくはありますが,楽だと思ったことはありません.厳しい競争はありますし,研究がすんなり上手くいくことはありませんでした.それでも,人生のピークは今にあると感じています.自分より能力が高い方々から指導を受けられること,研究へ没頭し論文投稿や学会発表など打席に立つ機会をいただけること,アフリカでワークショップの開催や大学発ベンチャーの取り組みなどの成長機会が身近に転がっています.自分の人生なので最終判断は自己責任ですが,一旦拾ってしまってから考えるのも良いと思います.
どうだ羨ましい環境だろう!私の価値基準では博士後期課程に進学してよかったです.