リスク・レジリエンス工学
研究群紹介
Messages from PhD and PhD candidates 2022 Vol.2 市毛 裕之 氏(日立建機 リスク工学専攻修了)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2022」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ2回目は、2017年9月にリスク工学専攻を修了して学位を取得され、現在は日立建機でご活躍されている市毛 裕之(いちげ ひろゆき)さんにご登場いただきました。
博士後期課程への進学を視野に入れた時期は、いつ頃だったのでしょうか?
私が博士後期課程進学を視野に入れた時期は、修士2年次の夏くらいだったと思います。進学を考えた時期としては遅かったため、社会人博士の道を目指しました。理由としては、研究したいテーマがあったことと職場が近いため社会人になってからでも学校に通うことが可能だと考えたためです。
博士後期課程時代の研究テーマについて、教えていただけますか?
東日本大震災の原子力発電所事故によって、原子力発電所周辺の空間線量率が増加しましたが、これがどのように減少していくかを予測する研究をしていました。研究では、土壌中のセシウムが移流拡散により鉛直下方向に移動することで、土壌により放射線が遮蔽され空間線量率が減少すると仮定し、その際の空間線量率の時刻歴モデルを組み立てました。このモデルでは土壌中のセシウムの移流拡散方程式を非整数階偏微分方程式によりモデル化を行いました。
博士後期課程時代に楽しかった出来事、印象的だった出来事などがあれば、お聞かせください。
上でも述べている通り、私は社会人2年目で博士後期課程に進学したため、博士前期課程を卒業後1年間は研究室に所属しておりませんでしたが、博士後期課程に入学した時のために修士時代の席をそのまま1年間誰も使わずに残していただけたことがうれしかったです。
学位を取得された後、どのような経緯で現職の道に進まれたのでしょうか。また、現在の業務内容について、教えてください。
現在の仕事は、学位を取得する前に選んだもののため、学位を取得して選んだものではありませんでした。
現在の業務内容に関してですが、建設機械の車体フレームやカバーなどの強度解析、キャビンの強度解析、機器部品の強度解析等を行っています。基本的に応力解析等の強度面での解析が多いです。各部品の強度を評価するための理論を勉強し、解析評価を行います。特殊な部品や社内のソフトで解析が難しい場合には必要なソフトを選定して会社に導入したり、解析を代行していただける会社を探すなどして業務を遂行します。
図1:研究内容_キャブ強度解析
博士後期課程でのどのような経験が、現在の仕事に活かされていると感じていますか?
私の場合は、博士後期課程の研究内容と職場の業務内容が結構違うため、直接博士後期課程で行った研究内容が職場の業務に生かされる機会はあまり多くはありませんでした。ただ博士後期課程中の研究でたくさんの数式を扱ったおかげで、職場で数式を使うような業務では自分の大きな強みになっていると思います。
現在の研究テーマについて、教えていただけますか?
職場での研究内容は、幅広い分野で複数の研究を行っておりますが、直近の研究の一つとしては、ベアリングの回転抵抗を、ベアリング設計時点で予測するための数理モデルを開発していました。数式にかかわる部分としては、微小接触面内の摩擦抵抗を計算する為に楕円積分の高速収束計算方法を調査しながら研究を遂行しました。
研究関心の原点についてお伺いしたいのですが、これまで取り組まれてきた研究テーマに関心を持つきっかけは何だったのでしょうか?
自分の場合は研究が必要とされていることが最初のモチベーションとなり取り組んでいました。テーマにこだわらず、需要がある研究なら何でもやるといったスタンスで始めてました。
ご自身の博士後期課程でのご経験やこれまでのキャリアを振り返り、今、博士後期課程への進学を考えている後輩の皆さんにメッセージをいただけますか?
今後、自分がどのような進路に進もうとも、今まで経験したことや学んだことは必ずどこかで活かせるようになると思います。自分の将来における視野を広げるためにも博士後期課程への進学は是非とも考えていただきたいです。