情報理工
研究群紹介

Messages from PhD and PhD candidates 2021 Vol.3 長阪 さやか 氏(情報理工学位プログラム)
今回は、「Messages from PhD and PhD candidates 2021」と題し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ3回目は、電気自動車を動かすときに発生する振動「トルクリプル」を、コンピュータ制御で効率的かつ高性能に抑制する方法を研究する、社会人学生の長阪さやかさんにご登場いただきました。
まずは、長阪さんが博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
現在も社会人としてメーカーで働いているのですが、仕事で触れていた制御理論をアカデミックに体系的に学び・研究するために博士前期課程に入りました。
企業では様々な背景から、新規性や独創性が強い研究や開発への着手は慎重になり、採用されるのも、耳を傾けてもらうのも難しい風土があります。
そのような社会人経験から、博士前期課程での新規性や独創性メインの研究スタイル、そしてそれに諸先生方が真摯に向き合い、ご指導・ご鞭撻して頂けることの貴重さを感じ、進学を決めました。
自身の仮説を探求していくのに、これほどの場所はありません。
後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
博士前期の1年後半です。進学に向けて、“博士後期で深化させていくのに相応な研究”という事を、研究テーマ、研究実績含め、強く意識しました。
長阪さんの現在の研究テーマについて教えていただけますか?
現在取り組んでいるのは、電気自動車のトルクリプルの抑制制御についての研究です。
電気自動車はモータで動くのですが、モータを動かす時にトルクリプルという振動が発生してしまいます。
具体的には、ドライバの操作からモータをどれだけ動かすかを算出して、トルクを指令することでモータを動かすのですが、指令したトルクに収まらずに振動してしまうという現象です。
この振動は、乗り心地の悪化や騒音に繋がり、動力効率を下げる原因になっているため、様々な抑制方法が企業や大学で研究されています。
これを、コンピュータ制御で振動させない・振動を抑制させる方法を研究しています。
併せて、自動車コンピュータ(一般的にPCよりも省エネルギー、省スペック)に載せる制御なので、自動車コンピュータでも処理しきれる事も重要になります。
このテーマに関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
博士前期課程入学以前に仕事で電気自動車のモーター制御を担当していたため、モーターを動かす時に発生するトルクリプルの解析と抑制を調査していました。そこから、コンピュータ制御で、より効率的に、より高性能にトルクリプルを抑制出来ないか探求したくなり、社会人として博士前期課程に入学しました。
博士後期課程でも、基本的なテーマは入学当初の動機である、トルクリプルの抑制なので変わっていません。
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
社会人なので、普段の時間の大半は仕事をしています。
また、転職をしたばかりなので、新しい仕事で習得しなければならない事が多く、今はゼミ・講義への参加は殆ど出来ていません。自由時間は、文献を読んだり、プログラミングや数学などの研究に必要な基礎力をつけることをやっていることが主です。
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
特にしていません。
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
所属企業に戻って、研究成果を製品開発に活かしたいです。
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをいただけますか?
自身の興味から始まる研究が、その分野の第一人者である諸先生方に真摯に向き合って頂ける機会・機関というのは、大学ならではです。また、大学に所属していることで、日々開講される多種多様なコースが受講出来ます。これらのコースは、研究を深化させるのにも、研究に行き詰った時の活路にも、有用となる知識を得るのに適しています。
是非、大学でしか得られないものを充分に活用することを考えてみて下さい。
就職してから、探求心が収まらなかった時にも思い出してみて下さい。