リスク・レジリエンス工学
研究群紹介

シス情在学生インタビュー企画 Vol.1: 蒲倉 光さん(リスク・レジリエンス工学学位プログラム )
システム情報工学研究群では、在学生に大学院での研究のこと、授業のこと、そして筑波大での生活についてリアルな声を聞くインタビュー企画を行います。第1回目の今回は、リスク・レジリエンス工学学位プログラムから、都市防災の分野で住民の避難行動について研究する蒲倉さんにお話を伺いました。
まずは、筑波大学システム情報工学研究群(通称:シス情)に進学を決めた理由を教えてください。
もともと両親が家の設計の仕事をしていた影響で、幼少期から建築や住環境・インテリアに興味がありました。しかし、東日本大震災を中1の時に地元の福島で経験し、慣れ親しんだ地域が津波や原発の影響を受けたことがきっかけで、建築にとどまらず街や地域などより広い範囲について関心の幅が広がりました。高校3年生の時に進路を選ぶにあたって、「都市計画」という分野を学びたいと思い筑波大学に進学しました。学部では経済学や経営学を含め幅広く学ぶことができました。大学卒業後は「都市防災」についてより専門的に学びたいと思いそのまま筑波大学の大学院への進学を決めました。
現在の研究室(都市防災研究室)はどうやって探しましたか?
大学入学当初から研究室の存在をHPなどから知っており、「都市防災研究室」 に進みたいとなんとなく思っていましたが、学部の時に都市防災研究室の先生方の講義などを受け、さらに興味が高まりました。研究室のHPから先輩方の研究内容を見たほか、大学院生と学部生との交流会で研究室の先輩や先生方と直接お話をして、具体的な情報収集をしました。最終的に、大学3年生の終わりに面接に行き、研究室配属が決定しました。卒業研究を経て、現在は博士前期課程の研究に励んでいます。
蒲倉さんの現在の研究テーマについて教えていただけますか?
毎年のように大規模な水害が発生し、住民の避難が必要とされています。しかし「自治体をまたいだ避難行動」に対する行政の対応が不十分であることが問題視されています。そこで私は、過去の災害事例や既往研究を踏まえて、分析手法を開発・実行し、今後の行政における広域避難対策の一助となるような成果を定量的に得ることができました。今後は、住民の意見を取り入れた研究を通してより現実に近い分析・検討を行い、実行性の高い避難対策につなげたいと思います。
この研究テーマに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
平成27年度関東・東北豪雨です。鬼怒川が決壊した光景が脳裏に焼き付いている人も多いのではないでしょうか。鬼怒川下流域に位置する茨城県常総市では、河川の流下能力を上回る洪水となり堤防が決壊するなど多くの被害が発生しましたが、自治体をまたいだ避難行動への対応が後手に回ったことが問題視されました。これは、日本の防災体制として、自治体ごとに防災対策が完結しており、自治体どうしの連携体制が築かれてこなかったという大きな問題が隠れています。
▲平成27年9月 関東・東北豪雨における常総市の浸水状況
出典:関東地方整備局ホームページ(https://www.ktr.mlit.go.jp/bousai/bousai00000176.html)
次に、授業について教えてください。今まで受けた授業で、特に面白い!と思った授業は何ですか?
大学院の「リスクコミュニケーション」という講義です。人々のリスク認知には様々なバイアスがあることや、人々が正しくリスクを認知するための方法を学ぶことができます。例えば災害時には「自分だけは大丈夫」というような思考に陥りがちです。私の取り組んでいる防災研究でも、このようなバイアスをいかに減らすかが大きな課題です。この講義の面白いポイントとして、実際にリスクコミュニケーションのツールを作成してみることです。私は災害時の避難行動を促すようなポスターを作成しました。また、プロのコピーライターの方のお話を聴く回もあり、とても実践的な講義でした。
研究に授業に充実した日々かと思いますが、大学以外で何か打ち込んでいる活動はありますか?
長期インターンです。筑波大学の近くに住んでいるので、普段はなかなか筑波大学外と関わる機会がないことから、あえて東京の企業で長期インターンを行っています。つくばエクスプレスを使えば東京都心まで意外とすぐなので負担はそこまで感じません。具体的には、Web系のベンチャー企業でWebライティングなどを行っています。論理的な思考やPCスキルが求められるので、楽しくもやりがいを感じています。リモートワークにも対応してもらえるので、研究で忙しい時期でもうまく両立できています。
今後の進路について、現時点で考えていることや目標としていることがあれば、教えてください。
「実学」に近い防災学を学んできたからこそ、実際の人々の活動に役立つことをしたいという思いが強いので、博士前期課程後は就職を考えています。人々の活動に不可欠な安全安心という基盤を支える仕事を通じて、よりチャレンジングな社会づくりに貢献したいです。
最後になりますが、今、シス情の受験を考えている皆さんに、何か伝えたいことがあればどうぞ!
シス情の魅力は何といっても多様性です。自分とは異なる専門分野の方々と関わるというのは、他ではあまり経験できないことかと思います。みなさんの入学お待ちしております!
関連リンク
- リスク・レジリエンス工学学位プログラム:https://www.risk.tsukuba.ac.jp/
- 都市防災研究室:https://infoshako.sk.tsukuba.ac.jp/~tj330/Labo/udml/index.html