知能機能システム
研究群紹介

ハカセになろう Messages from PhD and PhD candidates Vol.4 古賀 愛実さん(知能機能システム学位プログラム)
システム情報工学研究群(通称:シス情)では、在学生や社会で活躍するOB・OGの皆さんにインタビューを行っています。
今回は、2025年度 博士後期課程進学説明会~ハカセになろう~ と連動し、博士後期課程の現役学生・修了生に進学の経緯やご自身の研究、今後の展望などについてお話を伺います。
シリーズ4回目は、知能機能システム学位プログラム 感触工学研究室で、橋本悠希准教授ご指導のもと、「香り」や「嗅覚」という感覚に関する研究に取り組む、古賀 愛実(こが まなみ)さんにご登場いただきました。
まずは、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。
博士号への憧れから進学を決めました。大学内外で開催されている博士進学予定者・博士学生向けのイベントに参加するなかでSTEM分野での女性の少なさを感じ、研究やアウトリーチ活動によって少しでもこの分野の盛り上げに貢献できればと思ったことも理由の1つです。
博士後期課程への進学を視野に入れた時期はいつでしたか?また、進学に向けてどのような準備をされたか、教えてください。
博士前期課程に進学した頃には、後期課程への進学を考えていました。私は大学院から筑波大学に入学し、現在の研究室に所属することになったので、博士前期課程の2年間の研究では物足りなさも感じていました。
進学に向けた準備は特にはしていませんでした。強いて言うならば、金銭面で負担をかけてしまう可能性があったり、自身のメンタル面が不安だったので親にはきちんと相談しました。
現在の研究テーマの概要を教えていただけますか?
我々の身体は自律神経によって支配されており、交感神経と副交感神経のバランスによって精神だけでなく、消化器官のはたらき方も変わってきます。この自律神経は意識的に操作することはできないのですが、外部からの刺激によってコントロールできる可能性があります。その方法の1つが精油を使用した香料提示による方法です。最近では雑貨屋さんにアロマディフューザーと精油が販売されていることも多く、香りによって自身のケアを行うアロマテラピーにも注目が集まっています。しかし、精油によって効果は異なるため、必ずしも「好きな香り」=「必要な効果」となるとは限りません。不快な香りであった場合はそれがストレスとなってしまう可能性もあります。そこで個人の嗜好に関係なく香料の効果を得るために「ユーザが香りを知覚しない香料提示」について研究を行っています。

このテーマに関心を持つきっかけとなった出来事や経験があれば、教えてください。
「感覚」に関する分野について興味を持ったのは、博士前期課程に進学したときでした。学部時代の私には「感覚の研究」と接点がなかったため、この分野を知ってすぐに興味を持ちました。感覚の中でも嗅覚はまだまだ解明されていないことも多く、工学だけでなく生物、化学、心理学など幅広い分野から研究が行われています。学会では普段は関わることのない様々な分野の研究者と「嗅覚」や「匂い」というキーワードを通じでディスカッションが行えることにワクワクしました。
次に筑波大での学生生活についてお伺いします。普段、一週間をどのように過ごされていますか?
博士後期課程では講義を受講することは少ないので、研究だけでなく、自主的に勉強する時間も増えました。私の所属する研究室では週1で進捗報告会があるので、先生や後輩たちとディスカッションも活発に行われています。
博士後期課程になると研究室以外での人との関わりが減ってしまうため、研究室以外のコミュニティに属する時間を大切にしています。その1つとして、BHEの『つくりけCo-Lab』という団体で学生スタッフとしてミーティングに参加し、イベント企画を行っています。
休日は読書をしたり、友人と遊んだり、息抜きの時間になることが多いです。ただし、締め切りがある時やアイディアを試したい時は休日も研究しています。
現在、奨学金など、何らかの経済的な支援を利用されていますか?
JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(大学フェローシップ創設事業(情報・AI)相当)に採用されたため、授業料の免除と研究費・研究奨励費(生活費相当額)を頂いています。
学位取得後について、現時点で目標としていることがあればお聞かせください。
進学当初は企業で研究者になることが目標でしたが、博士後期課程対象のキャリア開発イベントなどを通して研究支援の仕事やメディアの仕事にも興味を持ち始めました。
『つくりけCo-Lab』では女子中高生を対象とした理系進路選択支援のイベントや学内の女子学生のコミュニティサポートのイベントを企画しています。これらのイベントの経験から、研究者でなくても人と科学を繋げるような仕事に就きたいと考えています。
『つくりけCo-Lab』HP:https://diversity.tsukuba.ac.jp/career/science-student
最後に、博士後期課程への進学を考えている、もしくは今迷っている方々にメッセージをお願いします。
私は博士後期課程に進学して良かったと思っています。博士前期課程の頃よりも、物事に対する考え方・見方が深くなり、自身のキャリアについて広い視野で考えられるようになりました。
友人たちが就職していくなかで自分だけ進学することには不安もありましたが、「このタイミングで挑戦しなければずっと後悔する」という思いと家族からの応援もあって進学することに決めました。現在迷っている皆さんも信頼できる人に相談することで自分の気持ちが定まってくるのではないでしょうか。


